2020年12月11日

過ごし方

普魯士亜藍色を見たことがありますか?

こんにちは。マリブホテルSenoです。

マリブホテルでは、客室のカードキーと一緒に、日の入りと翌朝の日の出時刻をご案内しています。

逗子ゆかりの作家、徳富蘆花が明治時代に書いた叙景文の一節に次のような一文があります。
「ああ、心あらん人に見せたきは此頃の富士の曙」

おそらく、場面は真冬の夜明け目前の逗子の浜。蘆花は腕組みしながら、あるいは仁王立ちでまだ暗い海をじっと見つめ朝日を待っています。

「灘の果てには水平線に沿うてほの暗き藍色を見む。」と、続く随筆。わずか数分の夜明けまでのひと時に、空、海、山々が薔薇色(しょうびいろ)、桃色、薄紅、紫、普魯士亜藍(ぷるしああい)色を写し、みずみずしい光とともに富士山があらわれる様子を微細に記しています。
簡単に写真が撮れない時代、蘆花はこの風景を何度見たのか、それとも一度きりで書いたのか、蘆花が生きていたら聞いてみたいと思うほど、この上なく美しい曙の瞬間が切り取られています。

冬の相模湾が美しいのは明け方だけではありません。
12月に入り、みるみる寒くなった逗子マリーナの海と、対照的に美しさを増す富士山の様子を皆さんにご紹介するため、先日、海上から絶景を味わう「富士ビュークルージング」に同乗して参りました。
冬場のクルージング船の出港は日の入り時刻の約1時間前。お天気が良ければ、夕日に浮かぶ雄大な富士山のシルエットをご覧いただけます。
船が陸を離れてからあっという間に広い海へ。振り返ると陸地はぐんぐん小さくなっていくのに、前方の水平線はさらに広がりを見せ、まるで、果てしない自然の中に放り出されたかのような錯覚を覚えます。
 

四方から迫る波音。クルーザーのエンジン音。身体に響く振動。目の前に広がる景色に五感が刺激され、考えようと思っていたこと、頭の片隅にいつもあるようなこと、これからしなければならないこと、そういったものが一切かき消され、寒さも感じず、ただただ目の前の風景に没頭している自分がいました。

蘆花の言うとおり、風景は刻一刻と色を変え、空は高く、広い。富士は雲に霞んでも美しく、インディゴブルーに変わりゆく海も、江ノ島も、葉山の漁港も等しく美しい。
この世は美しいもの、愛しいもので溢れている。
逗子マリーナに帰るころには、すっかりそんな気持ちになっていました。

間もなく2020年が終ろうとしています。日常が大きく変化し、考えさせられることの多い一年でした。
でも2021年は、必ず夜明けとともにやってきます。
マリブホテルでは、元旦から「新春 初詣クルーズ」が出港し、新春の富士と森戸大明神への初詣をいたします。

私もこの冬は蘆花を真似て浜に立ち、富士の曙を見ようと思います。
皆様も、美しい冬の色を探しに、ぜひ遊びにいらして下さい。

マリブホテル『富士ビュークルージングご招待プラン』はこちらから。