2020年12月発行

シナーラ

2015年2月にレストアプロジェクトをスタートし、2017年に修復作業を開始した歴史的木造帆船「シナーラ」。神奈川県三浦のリビエラシーボニアマリーナ特設ドックでの緻密な作業を経て、2020年3月、ついに小網代湾に進水を果たしました。プロジェクト開始から5年、世界から優秀な船大工を招聘して優美な姿を取り戻したシナーラは、今、相模湾でテストセーリングを続けています。

レストアはゴールではない
〝磨き上げ〟は日々続く

シナーラは現在、最終的な内装仕上げを行いながら、クルーと会長の渡邊は、毎週毎週、相模湾でのセールトレーニングを続けています。海風と水しぶきを浴びる極寒の中でも、熱き思いはいささかも変わりません。
建造当時のオリジナル木材をできる限り(8割弱)用いて修復されたヴィンテージヨット「シナーラ」は、海にデビューしたその瞬間から劣化や腐食が始まります。日光、雨、風、寒暖差など自然環境は容赦なし。
だからこそ、クルーは毎日の〝磨き上げ〟に余念がありません。磨くことで心も磨かれる―それはリビエラが最も大切にする理念。日々磨き上げることで改善点に気付き、愛着の心もより湧いてくる。
磨き上げの企業理念を体現しているシナーラは、まさにリビエラの〝フラッグシップ〟です。

多くの方々から
応援をいただきました

NAUTOR'S SWAN社 オーナー

レオナルド・フェラガモ 氏

世界でも30艇ほどといわれる大型のヴィンテージヨットのレストアは欧米でも注目されているが、その最後の一艇ともいえるシナーラが、日本に現存すると聞いて嬉しかった。この船をレストアできるとは、まさに天佑。大好きな日本で海に浮かぶシナーラをぜひ拝見したい。

ロイヤル・ヨット・スコードロン
元リアコモドール

デビッド・エイシャー 氏

祖父もクルーとしてシナーラに乗っていたので、私にとっても思い入れの深い船です。人生にはやり直しがきかないことがあり、今やらなければ永遠に失われてしまうものがあります。シナーラの修復に挑んでくれたことは、まさに人類全体への貢献です。

日本セーリング連盟 会長

河野 博文 氏

リビエラシーボニアマリーナの近くに家を持ち、窓辺からいつもシナーラを眺めていました。老いたこの船がマストを倒さざるを得なくなり、リビエラの皆さんが労わるようにゆっくり船体をポンドに移動させる姿に、胸が痛んだものです。それだけにレストアを決心したその英断に心から感動しました。

スペインセーリング連盟 会長

フレア・カサヌェヴァ 氏

2年にわたり、リビエラ逗子マリーナで五輪事前キャンプを行っている我が国のセーリング代表チーム。その折、ヨーロッパ出身の職人たちが日本で何年も修復作業をしていると聞き、驚きました。シナーラが東京五輪セーリング競技のフラッグシップとなる日を楽しみにしています。

作家

伊集院 静 氏

渡邊さんからシナーラ復元の話を聞いたのは、リビエラシーボニアマリーナでのセーリングでご一緒したとき。そのスケールとロマンに感動し、レストア作業の現場に通うことになりました。船を直すだけなら、彼らのホームグラウンドで作業する方が効率的。でも彼らは、古きヨーロッパの技術を日本に伝え再生させるために、遠路はるばる海を渡ってやってきた。人類普遍の宝を次世代へと繋げていくという渡邊さんの思いは職人たちと一緒。
この船が海に浮かび、帆に風を受けるとき、僕らはどんな風景を見るのか。

神奈川県知事

黒岩 祐治 氏

「古き良きものを磨き上げて次世代に残す」という理念に共感しています。世界の宝である〝海の貴婦人〟が今ここにあるのは、神奈川の誇りです。シナーラは人と文化、世界を結びつけますね。

タレント

堺 正章 氏

私もクラシックカーに魅せられて、シナーラと同じ1927年製の車を所有しています。走れる状態にメンテナンスし、ラリーも楽しんでいます。
作業風景を何度も見せてもらいましたが、渡邊さんの古い船に寄せる思いは、古い車への私のそれと同じ。維持していくことは大変ですが、シナーラの復元は、意義深い社会貢献だと思います。

シナーラ
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シナーラ
シナーラ
シナーラ
シナーラ
シナーラ

天の配剤と
すべての出会いに感謝して

海原に向かい潮風を浴びるデッキに立つことでしか味わえないロマンがあると私は信じています。それだけに、世界的にも貴重なヴィンテージヨットを保全し、帆に風をはらませて航行することこそ、歴代オーナーから引き継いだ私の使命だと感じています。
この修復プロジェクトは、創建当時の素材を約8割も残し、船齢90 余年のシナーラに、さらに100年以上の命を吹き込むものです。SDGsにコミットした持続社会を目指す「リビエラ未来創りプロジェクト」の理念に基づき、歴史あるこのシナーラを大切に磨き上げて次世代に残します。そして船に盛り込まれた技術や職人技を克明に記録し、環境や海洋分野の財産として後世に伝えていきます。
1927年に英国で誕生し、著名なオーナーたちに愛された〝海の貴婦人〟が、リビエラが所有している今、レストアの時期を迎えたことは、まさに天の配剤。そして、レストア専門技術者がいないこの国で技術伝承をしてくれた世界10か国50人の職人たちとの出会いにも感謝しています。彼らなくしては成しえませんでした。
応援してくださった皆様に厚く御礼申し上げます。

渡邊 曻

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  • シナーラ ミュージアム
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シナーラが航ってきた時代を感じるミュージアム完成

100年近く前に造られた船だけに設計図も構造計算書も入手できず、暗中模索で始まったレストアのプロジェクト。目の前にある“実物”のシナーラと向き合いながら復元を進めていく中で、王立グリニッジ博物館から設計図が保管されているとの連絡をいただくこともできました。信念をもって突き進んでいくと良い出会いにも恵まれるものだとつくづく感じました。レストア完成の使命を果たすことができた幸運と、多くの人々とのご縁に感謝します。
建造当時の生活様式や多様性、歴史など、レストアを通じて初めてわかったことが多くありました。それらを感じ取れるミュージアムが、この度完成しました。


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