東京五輪ゴルフ競技会場の
グリーンキーパーが語る

2021年10月発行

リビエラカントリークラブ

RRCでボランティアとしてコースづくりを学ぶ東海林さん

TOKYO2020ゴルフ競技の会場となった霞ヶ関カンツリー倶楽部(川越市)は、国内屈指の名門ゴルフクラブ。しかし、IOCや国際ゴルフ連盟(IGF)が要求する五輪水準のクオリティは、霞ヶ関CCの優れたメンテナンススタッフたちにも未体験のレベルだったといいます。この難題の解決に向けて、コースメンテナンスを率いるグリーンキーパー 東海林護さんがとった手段。それは、かつて自らが学んだ米国ロサンゼルスのリビエラカントリークラブ(RCC)に、スタッフを派遣することでした。

「RCCで学んだ〝あの感じ〟」が合言葉でした

霞ヶ関カンツリー倶楽部
グリーンキーパー 東海林護さん

「霞ヶ関CCが五輪競技会場に決まり、私が着任したとき、スタッフたちは重圧に悩んでいました」
そう振り返る東海林さんは、RCCが行う人材育成支援の交流制度〝エクスチェンジプログラム〟に参加し、PGAツアー「ジェネシス・オープン」でのコースメンテナンス実務を経験した気鋭のグリーンキーパーです。
「日本のゴルフ場は、いわば〝ガラパゴス〟。国内ツアーの実績は充分に重ねていますが、四大大会はもちろんPGAツアーなど国際大会は開催されたことがありません。五輪で要求される水準のコースメンテナンスを霞ヶ関CCのスタッフが身に付け、自信をもって大会に臨むには、PGAツアーを実地で経験させるのが最善と考え、RCCのエクスチェンジプログラムに参加。メンテナンスに関わるグリーンキーパー8名全員がRCCでの実務を体験させてもらいました。
実地経験を積んだ彼らは、PGAで通用するメンテナンスと運営方法を体得して戻りました。『RCCのときの〝あの感じ〟で』と言うだけで意思疎通ができ、五輪で求められる世界水準を認識してオペレーションできるようになりました。この成長は、RCCが種を蒔いてくれたおかげ。
今までグリーンキーパーとして多くの試合を経験してきましたが、国内大会では開催コースのスタッフだけでコースメンテナンスをします。それに対し、五輪本番では、霞ヶ関CCの8名がリーダーとなって、多くの志あるボランティアに的確な指示を出し、彼らと共にコースを作り上げていきました。これは、まさしくRCCで行われていたことと同じで、困惑することなくこのオペレーションに対応できました。
ゴルフコースは〝いきもの〟。アスリートと同じです。1年延期の影響を抑えるために、芝のコンディションとスタッフのモチベーション維持に心を砕きました。五輪という国際大会を経験し、日本のコースメンテナンスも、きっと変わると信じています。
数多くのビッグトーナメントの舞台となってこられたRCCは、ゴルフの歴史においてとても貴重な財産だと感じております。ましてや世界最高峰のコースコンディションはコースメンテナンスに携わる人間として目標であり、理想であり、憧れです。
今後も世界のゴルフ業界をリードしていく存在であって欲しいと願っています」


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