名門ボートビルダー「NAUTOR'S SWAN」社オーナーとの語らい

2018年12月発行

海と船を愛する“同好の士”として、お互いのクラブフラッグを交換したレオナルド・フェラガモ氏(右)と、リビエラホールディングス会長兼社長の渡邊。

新艇開発にも寄与した
パートナーシップ

100ft級の大型艇で知られるフィンランドのボートビルダー「NAUTORʼS SWAN」社は、世界中のセーラーの憧れ。日本では、2016年からリビエラリゾートが総代理店を務めています。
この名門ボートビルダーのオーナーが、レオナルド・フェラガモ氏。自身も実力派ヨットマンとして著名なフェラガモ氏は、あの世界的ファッションブランド一族のご出身です。フェラガモ氏からの招待で、フェラガモ本社を訪ねたのは1年ぶりのこと。
「また会いましょう」との約束が果たされました。
トスカーナの州都フィレンツェにある、中世貴族の館を改装したフェラガモ本社を再訪した私たちは、フェラガモ氏のはからいで「フェラガモミュージアム」の展示を堪能。細部までこだわる、フェラガモのモノづくりの原点を垣間見ました。このときの展示テーマは、フェラガモが渡った時代のアメリカ。ハリウッドスターのために誂えられた当時の靴の真正品が並べられ、一部モデルは、フィレンツェ本店限定で販売もされているとのこと。
中世の面影を残す上質なお部屋で食事を共に味わいながら、世界の船舶事情や、今後の展望について、大いに語り合いました。
以前の会合で、「愛艇家たちの生の声を日々聞いているリビエラが、日本のパートナーでいてくれることは、NAUTORʼS SWANにとって心強いこと」と述べたフェラガモ氏。
私たちが「日本のヨットオーナーはSWANの大型艇に憧れているが、わが国の港湾事情を踏まえると、70ftを超える船はハードルが高い。SWANの魅力をそのままに、日本の事情に合った新艇をぜひ」と伝えたところ、「パートナーならではの貴重な意見だ。さっそくフィンランドの工房と相談しよう」と頼もしく請け合ってくれて、その後、ミドルクラスの新艇が誕生しています。
今回の「Monaco Yacht Show 2018」では、SWANは115ftの新艇を出展しています。「この新艇を今回のモナコヨットショーで直接見てもらえて、本当に嬉しい」とフェラガモ氏。通信手段も情報伝達のツールも充実している昨今ですが、相まみえ、実物を見て、直に語り合うことの大切さを強調していました。「私たちは仲間だ。リビエラのメンバーのみなさんにもお目にかかりたい。地中海でお待ちしています!」

シナーラとリビエラの
出会いは幸運

名うてのセーラーだけに、フェラガモ氏は、私たちが日本でレストアに取り組む歴史的木造帆船『シナーラ』にも興味津々のご様子。

フェラガモ氏:「そもそも、どこで、どうやって、日本の君たちがシナーラを見つけたんですか?」

渡邊: 「リビエラが逗子マリーナとシーボニアマリーナの事業を手掛けることになったとき、シーボニアマリーナに係留されていたシナーラも受け継ぐことになりました。建造から90年を経た古き良きヴィンテージヨットを維持していくため、シナーラの磨き上げをしながら次世代に残す道を探りました。日本には大型木造帆船の修復技術がなく、このまま朽ちていくのを見守るしかないかと思っていたのですが、2017年、一大決心して海外から専門家を呼び寄せて、レストアプロジェクトを立ち上げました。今では世界10カ国から30人の船大工が来ています。調べてみたら、90年前の建造当時のパーツの7割強は、磨き上げて再び使えるとわかっています」

フェラガモ氏:「欧米ではクラシックヨットのレストアに注目されたことはご存知の通り。それほど状態の良いヴィンテージヨットが、遠く日本にまだあったとは……素晴らしいことですね! 世界でも30艇ほどしかない大型のヴィンテージ。その最後とも言うべき、彼女をレストアできるなんて、あなたがたリビエラは本当に幸せ者だと思います」

渡邊:「艇齢90年のシナーラに、さらに100年の命が宿る進水式には、ぜひご臨席ください」

フェラガモ氏:「100年の命が宿る進水式、興奮しますね。リビエラ逗子マリーナの目の前は、2020東京五輪セーリング競技の海域と聞きました。五輪会場に浮かぶシナーラをぜひ見たい。東京五輪は、リビエラにとってビッグエポックですね」

渡邊:「五輪エポックは2020年だけではありません。2028年のロス五輪では、ザ・リビエラカントリークラブが、ゴルフ競技会場に決定。その上で、五輪招致をしています」

フェラガモ氏:「素晴らしい。友人として誇りに思います」

ユーザーとメーカーを
つなぎ、こだわりを伝える

SWANの魅力、こだわりを詰め込んだ『SWANBOOK』を毎年発行。

フェラガモ氏:「それに書き刻まれた言葉は、私たちの魂だ。リビエラマガジンも同じように魂を感じる。
リビエラは、ユーザーに船のこだわりを伝えるだけにとどまらず、海での遊び方を提案し、船で海に出る楽しさを、リビエラマガジン誌面やリビエラリゾートクラブ運営を通じて、伝えてくれている。メーカーにできるのは作るまで。メーカーとユーザーをつないでくれるリビエラに、これからも大いに期待しています」

フェラガモ
フェラガモ
フェラガモ

「 フェラガモ・ミュージアム」の貴重な展示品。

“統合型リゾート”としての
マリーナの形

地中海に開かれた扉

地中海

ヨットだけでなく、大自然のロケーションを活かして、乗馬やトレッキングも満喫できる「Marina di Scarlino」。

フェラガモ氏の
「いちばん好きな場所」

レオナルド・フェラガモ氏が所有する「Marina di Scarlino」は、トスカーナを代表するマリーナ。緑連なる雄大な自然を背景とする絶好のロケーション。眼前に広がる穏やかな海原を吹き渡る良風。全欧のヨットマンに「最良の港のひとつ」と評価される地中海地域屈指のマリーナです。ひとたびここを訪れれば、レオナルド氏が「世界でいちばん好きな場所」と自賛するのも頷けるはず。
この場所が、セーラーのみならずバカンスを過ごす人の心を掴んで離さないのは、〝船を降りた後〟のコンテンツが充実ぶりを示しているからでしょう。タイプの異なる100棟からなる宿泊施設やレストランの数々。大自然を活かした乗馬、トレッキング、スパやフィットネス。もちろんレンタルボートも対応可能。ショップが軒を連ね、国際的なビジネスミーティングに対応したMICE施設も備えています。
すなわち、長期滞在型のラグジュアリーな総合リゾート。「少し前までは1〜2週間滞在が主流だったが、じっくり海上を満喫しながらリゾートを楽しむ1〜2か月滞在が増えてきている」と、ゼネラルマネージャーのAlessandro Augier氏。
Marina di Scarlinoの在り方は、リビエラがめざす方向性に、ひとつのモデルを示しています。

フェラガモ氏所有の
「Marina di Scarlino」との提携

フェラガモ氏いわく「われわれと日本のリビエラの間に格別の協力関係が結ばれた今、ぜひトスカーナに足を運んで、リビエラ会員にもMarina di Scarlinoを楽しんほしい。大歓迎します」とのこと。
リビエラのメンバーの皆さんに、地中海への扉が開かれました。

〝海に親しむ文化〟の
裾野の広さを痛感

それにつけても……。Marina diScarlinoに向かう車中で目の当たりにしたのは、この地域におけるプレジャーボートの裾野の広さでした。小さな入江があれば、たいていボートが係留され、多くの人々が気軽に船を楽しんでいます。
これもまた、リビエラがめざす日本の海の風景。地理的要因を超えて、海に親しむ文化を醸成したい。その思いをまた強くした光景でした。

“古き良きもの”を
次世代に残すこだわり

「シナーラ」とは異なるアプローチと、共通する思い

クラシックヨット

クラシックヨットたちの
〝真剣勝負〟

南仏カンヌで開催されるヨットレース「Cannes Royal Regattas 2018(世界クラシックヨット選手権)」は、イタリアの高級腕時計ブランド「パネライ」が主催する「パネライ・クラシックヨット・チャレンジ」のシーズン最終戦。『シナーラ』のレストアに取り組む私たちには、決して見逃すことのできない、建造から40年以上を経たクラシックヨットたちの〝真剣勝負〟です。
1949年以前に建造され当時の設計通りの状態を保っている「ヴィンテージ部門」、1950年から1975年に造られた「クラシック部門」、そしてクラシックヨットの設計をもとに近年建造された「スピリット・オブ・トラディッション部門」。レースはこの3カテゴリー。14回目の開催となった今年は、20ft〜40ftクラスに80艇、65ft〜98ftに20艇、シナーラと同じ98ft以上クラスに15艇エントリー。
木造帆船の要というべきリギン(マストやセールの専門家)であり、シナーラのレストアチームの一人でもあるチャック氏が、私たちをカンヌで迎えてくれました。
ヨットレース出場準備の忙しい中にもかかわらず、NAEMAのオーナーとキャプテンは、磨き上げられた船内をじっくりと案内してくれて、そして、シナーラのことを気にかけてくれました。後にNAEMAのキャプテンFlorian Frankeさんから「自分たちのクラスで2位になった」とうれしいお便りをいただいています。また、PURITANのオーナーとキャプテンは、「あのシナーラを蘇らせているのは君たちか。壮挙の噂は聞いていたが、はるか日本で取り組んでいたとは……。今、あなた方がレストアを決断した意味は大きい。ここに参戦している船同士もそうだが、歴史あるものを受け継いだ者たちの結びつきは強く、皆ファミリーです。シナーラを手掛けるリビエラを私たちは歓迎します」と実に温かい言葉を。
手付かずのままになっている20世紀前半建造の木造船は、もはや数えるほどしか残存していません。シナーラは、その貴重な一隻。世界のまなざしが注がれていることを、この人々の言葉から改めて実感しました。

シナーラ

改めて実感した
シナーラの〝奇跡〟

今、レストアしなければ、古き良きものは朽ち果ててしまう――その思いは、私たちとまったく同じ。だが、「Cannes Royal Regattas」に出走するクラシックヨットは、過酷なタイムレースを〝闘う船〟です。姿こそ建造当時のものを再現していますが、最新鋭の素材と技術を駆使し、新しい部品だけを用いて、当時そっくりの新造艇を作り上げる「レプリカ」もあります。
クラシックヨットの多くは、当時の設計どおりに新しいものを作って換装し、建造時の資材の残存率は多くて3割。1割でもレプリカではなくオリジナル扱いとなります。残存率の大小にかかわらず、「歴史あるパーツを残したオリジナルであること」に対する誇りの高さに驚きました。
一方、未来に向けて〝遺す〟ことを主眼とするシナーラで、私たちがめざしているのは、一つ一つのパーツを丁寧に磨き上げて、レストアを始める前の船体資材の7割を活かすこと。シナーラが奇跡といわれるのは、それが可能なコンディションを維持していたからです。
実は、「Cannes Royal Regattas」参加艇に関わっている技術者・職人の中には、シナーラのプロジェクトにも協力してくれている人が大勢います。クラシックヨットの熱戦を見守る人々は、私たちにとって、まさに思いを同じくする同志です。
期待の高さに、改めて身の引き締まる思いがしたものです。世界の愛艇家たちと、進水の喜びを分かち合うまで、いよいよ残り1年です。

“メガヨット一色”に染まった公国で

「Monaco Yacht Show 2018」探訪と
モナコヨットクラブ表敬

モナコ

1 自動車レースの「モナコF1グランプリ」のスタート地点としてお馴染みのエルキュール港を埋め尽くすかのような“ヨット”たち。ちなみに、ここでの“ヨット”とはプレジャーボート(遊行船)全般をさし、小型の帆船をさす日本語化したニュアンスとは違っている。中には全長100mを超える船も。
2 モナコボートショー会場で展示されていたNAUTOR'S SWANの新艇「115」の船上。
3 モナコヨットクラブ

メガヨット市場でも
高まるリビエラへの期待

横浜でも例年3月、〝ボートショー〟は盛況のうちに開催されていますが、〝世界最大級の〟と形容される「Monaco Yacht Show 2018」は、日本のものとは規模も雰囲気もかなり異なっています。セレブリティの社交場というにふさわしく、エルキュール港には、贅を尽くした大型のヨットが集結。日本にも近い将来おとずれるであろう〝メガヨット〟の世界が広がっていました。
展示されていたNAUTORʼSSWAN の新艇「115」は、レース艇でありながら居住性の高さも徹底重視。グループCEO のGiovanniPomati 氏の案内から新艇のこだわりを随処に実感しました。
招かれて歓待された「モナコヨットクラブ」のクラブハウスは、まさにヨーロッパの上質な社交場。
今後メガヨットに向かうアジア、とりわけ日本への視線の熱さは高まる一方。Monaco YachtShow 2018では、リビエラへの期待の声を聞くことができました。


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