2018年5月発行

丸山 茂樹 内藤 雄士

丸山茂樹プロ (左)とRCCにて。

内藤雄士さんは、日本ゴルフ界における“ツアープロコーチ”の草分け的存在。ツアーを戦うプロゴルファーをサポートして勝利に導くスペシャリストであり、丸山茂樹プロのUSPGAツアー3勝に貢献したことでも知られています。科学的理論に基づくゴルフ指導の第一人者として、雑誌・テレビなどでの技術解説でも多くのファンに支持される内藤さん。リビエラでは、この3月から内藤さんの理論に基づく「リビエラゴルフアカデミー」 がスタートしています。

ゴルフ ツアープロコーチ

内藤 雄士

NAITO YUJI

1969年9月18日、東京都杉並区生まれ。ジュニアゴルフスクール併設のゴルフ練習場経営の家に育ち、幼少時よりゴルフに親しむ。日本大学ゴルフ部在籍中に米国にゴルフ留学し、最新ゴルフ理論を学ぶ。 1998年、ツアープロコーチとしての活動を開始した。日本にツアープロコーチという概念を持ち込んだパイオニア的存在であり、丸山茂樹プロのUSPGAツアー3勝をサポートしたことは有名。現在は、多数の契約プロゴルファーのツアー優勝に貢献している。「マスターズ」、「全米オープン」、「全米プロ」の3大メジャー大会で丸山プロをサポートした経験を生かし、2013年からゴルフネットワークにて PGA TOUR の解説を担当。またジュニアゴルファーの育成にも力を入れている。ラーニングゴルフクラブ設立、代表。

RCCはキャリアの原点
20歳のころの思い出

―― この2月にザ・リビエラカントリークラブ(RCC)で開催されたUSPGAツアー「ジェネシス・オープン」では、内藤さんは、CS放送のゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」で解説をお務めでした。

内藤: RCCでのツアー解説を、例担当させていただいています。RCCは、私にとっても今のキャリアの原点ともいえる、思い出深いコース。初めて訪れたのは20歳のころ。20年以上前のことになりますが、日本では職業としてまだ確立していなかった“プロコーチ”をめざして、米国サンディエゴに留学したときのことです。
RCCはそのころも伝説的な名門コースといわれて、カリフォルニア州内に数あるゴルフ場の中でも、最も多くの一流プレイヤーを集めるコースとして知られていました。RCCでは2月にPGAツアートーナメントが開催されているわけですが、長らく「ロサンゼルス・オープン」という名で親しまれていた試合で、歴史ある大会でしたね。
アメリカに来たからには、とにかくそれを観ないことには始まらない。車を飛ばして行ったんです。カーナビなんてなかったから、道に迷ったりもして......。
車といえば、かのベン・ホーガンは、RCCでのトーナメント出場を果たしたとき、お金がなくて1晩5ドルの駐車場代が払えず、やむなく路上駐車したところ、朝起きたらタイヤがなかった。ようやく掴んだ出場チャンスなのに、これではスタートに間に合わないと途方に暮れていたら、後に激しくしのぎを削ることになるサム・スニードが通り掛かって、ただの親切心でホーガンをピックアップ。スニードの男気に救われホーガンは、この試合で2位に入り、キャリアの飛躍のきっかけを掴んだ。それがベン・ホーガンとRCCの切っても切れない縁の始まり――というエピソードがあります。数々の熱戦の舞台であり続けてきただけに、RCCは、レジェンドプレイヤーの逸話に事欠きません。
タイガー・ウッズもRCCと縁の深い選手で、現在はここでのトーナメントの大会運営にも携わっていますが、なぜかまだ勝てていない。
私の身近なところでは丸山茂樹プロもRCCでの勝利に焦がれつつ、惜しくも2位に留まっています。 先日もクラブハウスに掲げられた優勝者の写真を眺めながら、そこに自分の写真がまだないことを悔しがっていました。
彼らトッププレイヤーの心を掴んで離さないRCCに、私は毎年呼んでいただいているわけです。 今回のトーナメントでは、渡邊会長のご厚意で敷地内のロッジに宿泊しました。RCCに快適なホテルルームがあることは、一般にはよく知られていないこと。
ゴルフ解説では、こうしたこぼれ話も折り込みながら、RCCの魅力をお伝えしているつもりです。

丸山 茂樹 内藤 雄士

丸山プロ USPGAツアー初勝利のころ。ツアープロコーチとしての内藤さんのキャリアは、この“盟友”との出会いによって確立されたといっても過言ではない。

内藤 雄士

ジュニアクラスの指導をはじめた大学生のころ

内藤理論に基づく
“アカデミー”が始動

――この3月から東京・外苑前のリビエラスポーツクラブでは、内藤理論に基づく「リビエラゴルフアカデミー」がスタートしました。「Naito Yuji School of Golf」メソッドによるパーソナルレッスンを、都心のジムで受講できるとあって大好評です。

内藤: ゴルフは、トップアスリートが活躍するメジャープロスポーツの中でも、例外的に選手寿命が長い競技です。野球選手やサッカー選手は若くして引退を余儀なくされますが、プロゴルファーは引退しません。トッププロですらそうなのだから、アマチュアならば、年齢や体力に関係なく、息長くプレーを楽しめるはずです。
ところが実際は、「昔は越えていたホームコースのバンカーも、今じゃ届きもしないよ」などと溜息をついて、コースから離れてしまうシニアゴルファーが少なくありません。体力が落ちてボールが飛ばなくなったら、途端につまらなくなってしまう……………残念なことです。
でも、飛ばなくなったのは、体力が落ちたせいなのでしょうか?
体力が落ちたら、ゴルフを楽しめなくなるのでしょうか?

NYSG

「NYSG」コーチングスタッフの面々と。“プロを教えるプロ”ならではのトレーニングスキルは、リビエラゴルフアカデミーでも遺憾なく発揮される。

飛ばないのは、
筋力のせいではない

内藤: 加齢によって筋力が落ちても、効率的に力を伝えるスイングができれば、飛距離は落ちないものです。
女性アマチュアゴルファーの中にも、並みの男性ゴルファーなら足許にも寄せ付けないほどの技量を示す方がいますが、こういう女性ゴルファーはたいてい、スイングがとてもきれいです。うまいからスイングがきれい......というより、きれいなスイングができるから、体力がなくても飛距離が伸びて、スコアも良くなるということでしょう。

伸び代を広げる
科学的なアプローチ

内藤: 実はトッププロの世界でも、近年、飛距離は著しく伸びているといわれています。2000年当時のUSPGAツアーでは、平均飛距離が300ヤードを越えたのは、ジョン・デーリーだけ。それも301ヤードでした。2017年シーズンでは、平均317ヤードを記録したローリー・マキロイをはじめ、300ヤード超えは4人。トラックマンデータなど計測技術の進歩によって、より効率的なスイングを追求できるようになったことの成果といえます。
スイングを改善すれば、筋力の低下は充分にカバーできます。技術的改善余地が大きいアマチュアの場合なら、なおさらのこと。克服すべき課題がはっきりしている分だけ、伸び代だって大きいのです。
リビエラゴルフアカデミーでは、理論をしっかり学んだインストラクターが、最新機器の助けも借りながら、筋肉の使い方、正しい姿勢、そして体のつくり方などを、科学的アプローチでお伝えします。レッスンを通じて伸びていることが実感できれば、ゴルフは必ず楽しくなります。

―― このアカデミーでは、ゴルフレッスンの理論に通じたNYSGのコーチングスタッフと、体づくりの専門家であるリビエラスポーツクラブのトレーナーが連動して、お客様をゴルフ上達に導きます。トップアスリートが、各分野の専門コーチをつけるのに似ています。

内藤: そうですね。同じ場所・同じ時間で、技術・体力の両面から高度にアプローチできるという点が、このアカデミーのユニークなところだと思います。

“壁”を突き破る
専門家の客観サポート

内藤: ゴルフでモノをいうのは、その人が生まれつき持っている身体能力ではありません。ゴルフを楽しむ上で大切なのは、やっぱり技術。円熟の職人が神業を見せる伝統工芸の世界にも似て、年齢や筋肉量に関係なく、磨き続けることができます。
また、ゴルフは戦って他者を倒すスポーツではありません。 ゴルファーが挑む相手は自分自身のスコア。 一緒にラウンドするプレイヤーのスコアは、自分のそれとは無関係です。ゴルフとは、どこまでも自己完結のスポーツです。
とはいえ、自己流では上達しないのがゴルフというもの。自分の何が悪いのか、めざすイメージとどうブレているのか、他者の目でチェックしてもらう必要があります。
私はゴルフ練習場を営む家に生まれたのですが、私が幼いころにも、レッスンプロという職業はありました。ただし、このころのレッスンプロといえば、初心者を教えるのが仕事。ある程度うまくなったゴルファーは、レッスンプロの指導は受けなくなるのが当たり前でした。でも、プレーに慣れて伸び代が減ってきたゴルファーこそ、壁を突き破るためには専門家のサポートを必要とするのではないでしょうか。
筋力任せのパワーヒッティングでシングルプレイヤーにまで上り詰めたアマチュアが、加齢とともにスコアを落とし、モチベーションを失ってしまう。ゴルフの魅力を知っているはずの方々が、コースから遠ざかってしまう。これほど悔しいことはありません。
理論を知って技術を磨けば、ゴルフは生涯の友になります。そのお手伝いができたら嬉しい。 その思いが、リビエラゴルフアカデミーで形になりました。

内藤 雄士

研鑽中の若き日。日大ゴルフ部で練習に明け暮れていたころ、父が経営するゴルフ専門学校を訪れた米国人から、当時最新の科学的指導理論の話を聞き、「ゴルフが上手なだけでは、これからの時代に通用するレッスンプロにはなれない」と痛感。米国留学を決意した。 日本ではまだ、ツアープロコーチの需要が、顕在化していなかったころの話。


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