2022年1月発行

ジム・リチャーソン

この秋、米国ロサンゼルスのリビエラカントリークラブ(RCC)は、新たな総支配人を迎えました。ジム・リチャーソン総支配人―PGA of America(PGAアメリカ:全米プロゴルフ協会)の現職プレジデントを務める人材です。「RCC は稀にみる“特別なクラブ”、そして力を試すべき絶好の場所」と語るリチャーソン総支配人に、これまでのキャリアと、これからの意気込みをたっぷり聞きました。日本のリビエラメンバーへのご挨拶&所信表明です。

インタビュー:渡邊華子

リビエラカントリークラブ 総支配人
PGAアメリカ プレジデント

ジム・リチャーソン

Jim Richerson

アメリカ中西部出身。ウィリアムジュエル大学(ミズーリ州リバティー)卒業。同大学ではゴルフ部でキャプテンを務め、中心選手として数々の大会に出場。卒業後、Marriott and Ritz-Carlton Hotel & Golf Corporations に就職し、ゴルフマネージメントビジネスのキャリアをスタート。以後、ゴルフ業界での経歴を積み重ねる。その傍ら、PGAアメリカの役職にも従事し、2018年バイスプレジデント、2020年プレジデントに就任。2021年10月、RCC総支配人に着任した。

100年の歴史と
文化の深さに惹かれて

― まずは、リビエラカントリークラブ(RCC)へようこそ!
総支配人就任とともに、リビエラファミリーの仲間入りを歓迎します。着任して1ヶ月が経ちましたが、いかがですか?

リチャーソン: 約100年にわたる歴史と、その歴史を通じて育まれてきた文化の深さで、ゴルフ界に広く知られた存在であるRCCに、この立場で参与できることを光栄に感じています。
RCCメンバーであることに誇りを持つメンバーのみなさまも、共に働くスタッフたちも、私を温かく迎え入れてくれました。
就任してまだ日が浅いですが、RCCを心から愛する人々との語らいで、「なぜここが特別なクラブとなり得たのか」を学べたことは幸いでした。
渡邊チェアマン、メーガン富士子プレジデントは、RCCをより豊かなクラブにするための素晴らしいビジョンをお持ちです。そのビジョンを具現化し、RCCがさらにステージを上げていくこの時に、私も力を発揮できることは、大変エキサイティングなことだと思っています。

― 今、RCCでは、2月開催の「ジェネシス・インビテーショナル」の最終準備をしている頃では?

リチャーソン: ジェネシス・インビテーショナルは、準メジャーとなるタイガー・ウッズの招待試合として準備を進めています。そして4年後のRCC100周年、6年後の2028年ロサンゼルス五輪、その他ローンチ前でまだお伝えできませんが大きなプロジェクトを進めています。
世界中のゴルフファンに期待される最高の舞台をしっかりと準備し、必ず成功に導いていきます。

「磨き上げられたクラブ」
より極めることが私のゴール

― 総支配人としての抱負を聞かせてください。

リチャーソン: 渡邊チェアマン、メーガン富士子プレジデントから与えられたミッションであり、私の目指すゴールは、メンバーに対して最高のサービスを提供することと、PGAトーナメントコースとして常に最高のコースコンディションを保ち続けること、そして、心豊かにクラブライフを送っていただくために、RCCをさらに磨き上げることです。

2026年に100周年を迎えるRCC
2028年L.A. 五輪にて男女ゴルフ競技開催予定

― RCCは、メンバーとその同伴ゲストだけが集うプライベートなクラブコース。
例年2月のPGAツアーに加え、様々な格式あるトーナメントやメジャートーナメントを行っています。PGA基準において〝最高〟のグリーンコンディションを常に保ち続け、メンバーに提供しているRCCのコースの魅力は?

リチャーソン: 変化に富み、時にプレーヤーを翻弄させるコースであるからこそ、プロゴルファーをうならせ、また〝最高〟と評されるRCC。
そのクラブでプレーできるのは、ごく限られたメンバーだけ。攻めがいがある最高のコースでプレーすると共に、伝説的な名プレーヤー、ベン・ホーガンにちなんだ〝ホーガンズ・アレー(ホーガンの小路)〟と称されるRCCをゆっくりと歩き、約100年の歴史を感じられることは、プロ・アマチュアに限らずゴルファーにとって至極の喜びです。
また、ベン・クレンショー、アーノルド・パーマーなど、その時々の素晴らしいプレーヤーの足取りをたどりながらプレーできることは、グリーンメンテナンスが行き届いたコースというだけではないRCCの奥深さ。それは他では味わえない魅力です。

ベン・ホーガン

1948年全米オープン、1947〜48年L.A.オープン優勝のベン・ホーガン選手、RCC にて

アーノルド・パーマー

1963年・1966~67年L.A. オープン優勝のアーノルド・パーマー選手、RCC にて

キャリアのベースにある
ホスピタリティ

― PGAアメリカの現職プレジデント(第42代)であり、ライダーカップ、PGAチャンピオンシップ、PGAシニアチャンピオンシップ、KMPG女子PGAチャンピオンシップ…といった大舞台の実行委員として辣腕をふるってこられたリチャーソンさん。これまでの経歴を教えてください。

リチャーソン: 私はアメリカ中西部の大家族で育ちました。
父は、各地の高校・大学のフットボール部やゴルフ部で教えるプロコーチでしたので、父の任地が変わるたびに、私たち家族も引っ越しを繰り返しました。幼いころからの転居経験のおかげで、私はアメリカという国の多様性を肌感覚で知り、国のあちこちでネットワークを築くことができました。これは後になって非常に良かったと思っています。
父の影響で、私たち6人きょうだいは、学生時代にそれぞれ何らかのスポーツを経験し、私自身はゴルフに打ち込みました。

― アスリートとして有望だったジム青年が、大会運営側に転じてキャリアを築くことになったきっかけは?

リチャーソン: 大学でゴルフ部に入って活動するうちに、ゴルフという競技自体に強く惹かれるようになり、同時に、大勢の人々との共同作業で競技大会を創り上げることに関心が移っていきました。
そして大学卒業後、初めてのキャリアを得たのが、マリオット&リッツカールトンのゴルフ部門。

― ホスピタリティ業界のご出身なんですね? 日本のリビエラとも合い通じます。

リチャーソン: そうですね。その後、大手陶器メーカー・コーラー社の総支配人兼ゴルフディレクターや、トゥルーン社で上級副社長を務めました。
そしてPGAアメリカのメンバーになってから四半世紀以上が経過します。ウィスコンシン州の地方組織の事務方からスタートして、同州から初の全米組織の役員に選ばれ、事務局長、バイスプレジデントを経て、2020年にPGAアメリカのプレジデントに就任しました。

ジム・リチャーソン

大家族で過ごした幼少期

バイスプレジデント

2018年全米プロゴルフ選手権にはPGAアメリカのバイスプレジデントとして従事

ベン・ホーガンや
ジャック・ニクラスに憧れて

― 次なるステージとしてRCCを選んだ理由は?

リチャーソン: それは、他ならぬRCCだからです。
RCCを舞台とした1947年LAオープン、1948年全米オープンを制したベン・ホーガンが「全米有数のショートホールであり、私が最も好むもの」と称した4番ホール。「全米で一番短く戦略性に富んだパー4のホールであり、メジャー大会コースの中でも最も素晴らしいホールの一つ」と帝王ジャック・ニクラスが語った10番ホール。また、名優ハンフリー・ボガートの逸話が残る「ボギーの木」で知られる12番ホールなど。歴史を重ね、名プレーヤーに愛されてきたからこそ、エピソードと共に、数限りない物語を紡いできたRCC。コースだけでなく、クラブハウスにも尽きることないドラマがあり、クラブハウス全体がミュージアムになっています。
RCCの歴史には、ゴルフの歴史そのものが詰まっています。
私自身も憧れる名プレイヤーの足取りが残るコースやクラブハウス、コースメンテナンス、クラブ運営、メンバーシップにおいて、古き良きものを守りながら磨き上げ、常に進化し続けるこの「特別なクラブ」に運営管理者として名を刻む機会を与えられることは、千載一遇の機会だと感じています。

RCC6番ホール

グリーン中央にバンカーがあるRCC6番ホール

RCCのクラブハウス

RCCのクラブハウス

フィル・ミケルソン

2021年全米プロゴルフ選手権にて優勝者のフィル・ミケルソン選手と

コロナ禍で
ゴルフ需要が伸びている

― セキュリティが厳格なRCCは、コロナ禍においても安心安全を担保された貴重なプライベートクラブとして、メンバーに喜ばれています。

リチャーソン: 心身共に解放される場所、家族や仲間とゆっくり過ごせる場所として、RCCをメンバーが求めています。

― ゴルフ界には2021年、明るいニュースもありましたね。

リチャーソン: RCCでも2008年、2009年優勝と馴染み深いフィル・ミケルソン選手が、5月の全米プロゴルフ選手権において50歳11ヶ月でメジャー最年長優勝記録を更新。松山英樹選手のマスターズ優勝(4月)もありました。
また、伝統の米欧対抗団体戦「ライダーカップ」(9月)で、スティーブ・ストリッカー選手率いるアメリカチームが、10打の大差をつけてヨーロッパチームに勝ったことも印象深いです。個性派揃いで、中には犬猿の仲といえる間柄の選手たちもいるアメリカチームを、ストリッカー主将が巧みにまとめました。
ストリッカー選手は、2010年にRCCで開催されたノーザントラストオープンの覇者です。

― どの選手もリビエラとしては肩入れしたくなります(笑)
日本では、コロナ禍においてゴルフは「密にならないスポーツ」として、一大ブームの機運にあります。

リチャーソン: アメリカも同様です。アメリカでもゴルフ用品の売上が向上し、タイガー・ウッズが華々しく活躍した時期以来の伸びです。
特筆すべきは、ジュニアゴルファーの活躍があげられます。
プロツアーでも、男女ともに20代選手の台頭が著しいです。RCCでも首位争いに絡むジョーダン・スピース選手、ジャスティン・トーマス選手、松山英樹選手、コリン・モリカワ選手、ジェシカ&ネリー・コルダ姉妹、レクシー・トンプソン選手、笹生優花選手など20代の若手、そして、その次の世代を担うジュニアが、彼らに続いています。
つまり、今後20年以上、有望選手の活躍が期待できるということ。

― 若手台頭の理由は?

リチャーソン: ひとつには、ジュニア育成のプログラムが、ようやく実を結んできたということがあるでしょう。
振り返ってみれば、10年前まではジュニア養成の環境など、ないに等しい状況でした。しかし近年、PGAアメリカには「PGAジュニアリーグゴルフ」があり、全米ゴルフ協会には「アジアトーナメント」、マスターズ委員会には「ドライブチップ&パットコンテスト」などの充実したジュニアプログラムがあります。ジュニア選手でも大人顔負けの飛距離やスコアを出したりと、年々レベルが上がっています。
RCCでもジュニアプログラムに力を入れていますが、今後のゴルフ界を担うジュニアの育成こそが、ゴルフ界の発展に直結していることは言うまでもありません。

地道な取り組みが大事
ネバーギブアップ

― このリビエラマガジンには、アマチュアゴルファーの読者が大勢いらっしゃいます。

リチャーソン: 計算し尽くされた難しいゴルフコースの魅力をアマチュアが味わうためには、それなりの修練が必要ではないでしょうか。ゴルフは「心・技・体」が大事と言いますが、ハイレベルのプレーヤーには、そのバランスが求められます。トッププロは、栄養学やフィットネス、メンタルのコントロールを重んじ、そして精通しています。
アマチュアはドライバーの練習に多くの時間を割きがちですが、プロはアプローチやパットの練習にドライバー練習の2倍以上の時間を割くものです。地道な練習こそがスコアメークのカギになることは間違いありません。
私がもっとも好きなプロゴルファーは、タイガー・ウッズ選手。カリスマ性やプレースタイルは、誰もが憧れる選手です。

― そのタイガーが、一度も勝てていないコースがRCCです。この事実は、RCCの難しさと奥深さを象徴しています。

リチャーソン: そのとおり。この点もまさに、RCCの魅力だと思います。

― タイガー・ウッズ財団は、ジェネシス・インビテーショナルのオペレーションとしても、2018年からRCCと協働しています。リチャーソン 16歳でデビューしたRCCをトーナメントコースとして、タイガー・ウッズがホストの招待試合が開催されることになっためぐり合わせに、彼自身が心からの感謝を口にしています。

― タイガーは社会貢献プログラムも確立していますね。

リチャーソン: RCCでも、渡邊チェアマンがRCCを手掛け始めた1988年から社会貢献を始めたと聞いています。趣旨に賛同した多くのメンバーが、リビエラファミリーとしてチャリティに参加す
ることは日常的です。また、環境に配慮した小川プロジェクトも進めています。

― 日本のリビエラグループでも2006年より様々な社会貢献を行っています。フラッグシップであるRCCのスタッフも日本のスタッフも、そしてメンバーもリビエラファミリーとして心をひとつにしていけることを嬉しく思います。

リチャーソン: 家に帰れば11歳の娘の父親です。家族も含めて、メンバー、スタッフがみなリビエラファミリーとして心をひとつにするRCCを誇りに感じています。
 ガンバリマス!

RCCスタッフ

心を一つにするリビエラファミリー、RCCスタッフと


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