2021年4月発行

渡邊 曻

株式会社リビエラホールディングス
代表取締役会長兼社長

渡邊 曻

風薫る季節に美しきシナーラ

相模湾はすでに風薫る季節。心豊かに過ごせる日和が続いています。
リビエラシーボニアマリーナ(三浦)では、船齢94年の歴史的木造帆船「シナーラ」が、優美な佇まいを水面に浮かべています。レストア(修復)プロジェクト開始から6年を経て「海の貴婦人」と称賛された姿を取り戻したシナーラは、昨年3月に進水を果たし、以来、様々な海象で習熟航走を続けてきました。
社員から抜擢されたクルーは、日頃は新鋭挺を駆る優秀なシーマンです。そんな彼らにとっても100年前の技術で造られたシナーラの操船は驚きや気付きの連続。歴史の重みと先人の叡智、造形美に五感で触れ、シーマンとしての考え方・生き方が一変するほどの感動を覚えたといいます。
これはまさに万難を排してレストアを決断したときの私自身の思いと同じ。自分の信念で始めたことの意義を、社員・クルーが全身全霊で感得してきたことに、私は今、大変心を強くしております。

ゼロからの出発が世界に認められた

この貴重なクラシックボートをレストアするために、世界10カ国から日本に集まった50人の熟達の船大工たちも、ほとんどが故郷に戻りました。彼らとの出会いがなかったら、困難を極めたレストアの成功はなく、広い世界から彼らを探し出し、日本でチームを組むことが、プロジェクトの第一関門だったとさえいえます。本場伝統の匠の技を、意気盛んな日本の人材に、彼らは惜しみなく伝えてくれました。
世界の匠たちは今もオンラインでつながって、シナーラの前途を見守り続けてくれています。「チーム・シナーラ」は、まさに世界に広がる〝リビエラファミリー〟です。
そしてこの度、私たちファミリーに嬉しい知らせが届きました。それは、権威ある英国の専門誌「Classic Boat」が主催する「Classic Boat Awards 2021」の『Restoration of the Year (Over 40ft)』受賞の朗報です。本場欧米の名艇たちに伍してノミネートされたことすら、アジア初の快挙でした。
この賞は「クラシックヨットに関わるすべての人の情熱と献身を讃える賞」で、全世界の愛好家によるWEB投票で選ばれます。半世紀近く日本にあったシナーラは、欧米では遠い記憶となっていただけに、さ
すがに受賞は無理といわれていました。が、蓋を開けてみれば、史上最多の投票数を獲得。私たちのこだわりと努力が、世界に伝わっていたことを実感する結果となりました。シナーラに熱き一票を投じてくださったすべての人に、心から御礼申し上げます。

オンラインで初開催SDGsフェス

世界にも稀なクラシックヨットの完全修復は、「古き良きモノを磨き上げ次の世代へ」というリビエラの理念を体現した挑戦でした。今やらなければ、失われてしまう―その強い思いはSDGsとも合致。環境、教育、健康・医療の3軸に重点を置いた「リビエラ未来創りプロジェクト」を2006年に立ち上げ、継続的な社会活動に取り組んできたリビエラにとって、シナーラのレストアもまた、SDGsの実践です。
前回のマガジンでもお伝えしたとおり、〝集いの場〟を生業とするリビエラは、SDGsへの取り組みに同じ志を持つ人や事業体をつなぎ、新たな連携を生み出す〝ハブ〟の役割を務めたいと考えてきました。
その取りかかりが、この冬、リビエラ逗子マリーナにおいて収録し、3月25日に配信開始した「第1回リビエラSDGsフェス」です。コロナ禍によりオンライン開催となりましたが、医師、環境活動家、研究者、脱炭素に取り組む企業、自治体首長、小中学生……と、多彩な顔ぶれがトークセッションを展開。SDGsをツールとした連帯の輪の広がりを目の当たりにできます。次回は6月9日、リビエラ東京(池袋)でリアルイベントを目指して計画中です。
この新たな〝場〟が、大きな未来を拓く第一歩となることを願って。


X ポスト facebookシェア LINEで送る