〜三崎漁港で始まった取り組み〜

2019年12月発行

スーパーヨット

本場ではスタンダード
豪華で巨大なヨット

ヨットといえば、日本語ではもっぱら風をはらんだ帆で進む小型船のイメージ。しかし、欧米の言語では違います。ヨットとは、本来「豪華な遊行船」の意味。帆の有無は問いません。船体の大きさもさまざま。
肝心なのは〝大型で豪華〟ということ。それが本場の価値観です。
日本でおなじみのヨットは、大型のクルーザーでも全長40ft(約13m)前後ですが、欧米では全長24m以上の「スーパーヨット」と呼ばれるビッグボートが数多く建造され、年々巨大化する傾向にあります。中には客船と見紛うような全長100mを超えるものも。
今、スーパーヨットは全世界に9,000隻ほど。毎年、世界の関係者から招待を受け、リビエラが訪問するモナコヨットショーでも、年々スーパーヨットが会場を占めてきています。

日本寄港を阻む2つの〝壁〟

日本では、スーパーヨットは稀な存在。2018年には、横浜に立ち寄ったことがニュースになっていましたが、メディアがわざわざ取り上げるほど、スーパーヨットはめったに訪れません。訪日外国人観光客が年間3,000万人を突破したこの
ご時世に、なぜなのか―?
「世界のスーパーヨット・オーナーたちも、日本には大きな関心を寄せています」と解説するのはSYLジャパンの稲葉健太社長。稲葉さんは、プライベートヨットの運航を支援する船舶代理店。スーパーヨットの国内誘致にも尽力されています。
「南北に長く、津々浦々に港がある日本は、四季の変化と多彩な景観を海伝いに楽しめる世界有数のクルージング・デスティネーション。また、空港と港湾の距離が近いこともプライベートジェットで世界を飛び回るセレブには好都合。空路での入
国後、最寄りの港で待たせていた船にすぐ乗れるから、限られた余暇をクルージングで満喫できる―オーナーたちの目には、日本の海は魅力的に映っています」(稲葉さん)
 が、現実には〝壁〟があります。「一つ目は、港湾の特性。日本には確かに多くの港がありますが、その大半は漁港。大都市に整備されているのは客船や貨物船のための施設です。いずれも遊行船の運航には不向き。スーパーヨットの寄港を促すに
は、施設の再整備が不可避です。
二つ目の壁は、入管や通関の煩雑さ。外国船籍の船の中は、接岸していても〝外国領土〟と見なされるため、人や物が出入りする毎に手続きを要します。これを面倒に感じるのは必然のことです」(稲葉さん)

地元14者の連携による
新たな三崎漁港の活用策

この状況下、リビエラが提案したのが、神奈川県三浦市の三崎漁港の活用でした。三崎漁港は、遠洋漁業の一大拠点。スーパーヨットと船体サイズが近い遠洋漁船を多数運用する三崎漁港なら、浮桟橋の導入など施設再整備も現実的です。入管・通関・検疫等についても、既存のものを活かせる点は遠洋漁港ならでは。
去る7月には、県、市を含む地元14者の連携による「三浦市スーパーヨット誘致委員会」が発足。我々(株)リビエラリゾートも名を連ね、受け入れに向けた各種業務を担当します。
スーパーヨット誘致には、行政サイドも熱い視線を注いでいます。「漁港の特性を漁業以外の用途に活かし、多目的化する―これは、全国的にもユニークな、新しい取り組みになると思いました」と語るのは、神奈川県の浅羽義里副知事。
「相模湾はすべてが揃った恵みの海です。空港にも近く、新幹線も通っています。神奈川県内には横浜や鎌倉や箱根があり、千葉や静岡も船ならすぐそこ。相模湾のうまい魚には、舌鼓を打つはず。多目的化の新たな取り組みによって三崎漁港が活性化すれば、後退基調が続く水産業にも好影響が期待できるでしょう」(浅羽副知事)
一般に、海の観光を推進する立場と地元の水産業では、利害がぶつかることも多いといわれます。しかし、今回の取り組みには、漁業者も商工会も一体になって参画。今やまさに〝ワンチーム〟です。
「立場が異なる関係者間の相互理解には、細やかな配慮が大事です。東京五輪2020セーリング競技に向けた去る8月レセプションに、リビエラは地元漁業者の代表も招かれていましたね。こういう気遣いをされるリビエラだからこそ信頼され、関係者間の連携にもつながります。
皆を繋ぐリビエラの力に、これからも大いに期待しています」(浅羽副知事)

スーパーヨット

海外でのスーパーヨット
チャーター事業も開始

リビエラでは、スーパーヨットの国内受け入れだけでなく、スーパーヨット事業をグローバルに手掛ける「キャンパー&ニコルソンズ(C&N)」との提携により、海外でのスーパーヨット・チャーター事業、スーパーヨット販売も開始しました。地中海やカリブ海、アンダマン海といった世界のオーシャンリゾートで、究極のヨットライフを、日本のお客様に体験いただけるサービスです。
「2020年の東京オリンピック、2021年にニュージーランドで開催されるアメリカズカップと、ビッグイベントが続くアジア太平洋地域は、私たちのビジネスにとって重要性が増すばかりです。私たちが提案するのは、スーパーヨットならではの特別な体験。冒険心に富む日本のヨット愛好家の皆様にも、その魅力を堪能してほしいと願っています」と語るのは、C&Nマネージング・ディレクターのカルメン・ラウ氏。
リビエラは、世界のヨットマーケットを見続け、グローバルなネットワーク構築にも力を注ぎ、こうしてご案内できる時を迎えています。
日本での本格的なスーパーヨット時代の幕開けをめざして―リビエラは、各方面の関係者の方々と、熱く手を携えてまいります。

稲葉健太

SYLジャパン

稲葉健太社長

浅羽義里

神奈川県

浅羽義里副知事

カルメン・ラウ

C&N
マネージング・ディレクター

カルメン・ラウ氏


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