2020年3月発行

丸山 茂樹

“マルちゃん”のニックネームで親しまれ、多くの人々に愛される丸山茂樹選手。幅広い人気と世界に通じる実力で日本ゴルフ界を牽引してきた丸山さんは、50歳を迎えた今、“フェアウェイの外”でもゴルフ界に貢献する活動にも精力的に取り組まれています。それは、「プレーの魅力をわかりやすく伝えること」「後進を育てること」。「ジェネシス・インビテーショナル」開催中のザ・リビエラカントリークラブ(RCC)で、丸山選手と旧友のリビエラグループ代表・渡邊曻がお話を伺いました。

プロゴルファー

丸山 茂樹

MARUYAMA SHIGEKI

1969年千葉県出身。日本大学で活躍、アマ37冠で92年にプロ入り。マルちゃんの愛称で親しまれ、日本ツアーでは通算10勝、2000年からPGAツアーに本格参戦し、通算3勝をあげる。2002年には伊沢利光プロとのコンビで、EMCゴルフワールドカップを制している。現在は、ゴルフ中継の解説者をはじめ、様々なメディアにて活躍する傍ら、一般財団法人丸山茂樹ジュニアファンデーションの代表理事として、ジュニアゴルファーの育成にも力を入れている。2016年リオデジャネイロ五輪では、ゴルフ日本代表ヘッドコーチを務め、2020年東京五輪でもヘッドコーチを務める。セガサミーホールディングス所属

世界の逸材と出会えた
ジュニア時代

渡邊: 丸山さんとは個人的にも長年親しくさせてもらっています。ゴルフ人生を振り返って、いちばんの思い出は?

丸山: 17歳のときの世界ジュニア選手権初出場でしょうか。あの試合には、アーニー・エルス(南ア)や、フィル・ミケルソン(米国)も一緒に出ていました。あのときは、アーニーが2位で、僕が6位、フィルが8位。

渡邊: 高校生で世界大会に出たら、後のスーパースターが2人もいた?

丸山: そういう逸材たちと出会い、競い合えたことは、ジュニア時代のよい思い出ですね。

渡邊: 1996年の全英オープンでは、プロ転向直後のタイガー・ウッズと相まみえています。

丸山: タイガーの出現は、衝撃的でした。あの全英は、僕にとっては世界メジャーのデビュー戦。タイガーとは、同じホテルに泊まりました。あの試合では、〝帝王〟ジャック・ニクラスと同じ組で回ったんです。タイガーを見て、帝王と回って……目がくらむような体験ですよね?

ノーザントラストオープン

2010 年 RCC で開催された「ノーザントラストオープン」に出場

ジェネシス・インビテーショナル

今年の「ジェネシス・インビテーショナル」でタイガーと久しぶりの再会

すべてを準備して
臨んだPGA挑戦

渡邊: 丸山さんもPGA3勝。日本が世界に誇る実績です。

丸山: 1勝目(2001年の「グレーター・ミルウォーキー・オープン」)は、確かに思い出深い勝利でした。 当時22歳のチャールズ・ハウエル3世とのプレーオフ。これを決めたら、青木功さんの日本人選手初勝利以来18年振りの優勝。多くの先輩たちがやれなかったことを自分がやろうとしている。そう思ったら、震えが来ました。

渡邊: あの当時の丸山さんは、日本国内に敵なしでした。

丸山: 誤解を恐れずに言うと、国内での戦いには、得るものが少なくなってきていると感じていました。バージョンアップするためには、PGAツアーに飛び込むしかない、と。

渡邊: でも、それには犠牲も伴うわけですよね? 言葉の壁だってあったでしょう?

丸山: しっかり準備をして臨みました。日英両語に巧みな専属キャディも雇ったし、妻が同行してサポートしてくれた。この他にも、多くの方々の協力がありました。この挑戦は決して僕ひとりだけのものではない。助けてくれたすべての人たちに感謝しています。

先輩たちの足跡が
教材になった

丸山: 多くの人に支えられていても、不安はありました。優れた先輩たちが挑戦して、敗れたPGAの壁は高くて厚い。だから、俺もどうせダメだ。そう思うタイミングもたくさんありました。それでも諦めなかったのは、行くことに意味があったから。

渡邊: パイオニアワークには、実行するだけでも意味があります。

丸山: 先輩たちの背中を追った僕には、後から行った者ならではの〝強み〟もありました。それは先輩たちの失敗に学ぶこと。先輩たちの戦績を細かく分析することで、自分に不足しているものを把握することができました。

渡邊: クレバーなゴルフは、丸山さんの持ち味です。

RCCは豹変する
2つの顔がある

渡邊: 丸山さんと、RCCのご縁の深さは、リビエラグループの誇りです。

丸山: 2000年のPGAツアー本格参戦の当初から、RCCにはお世話になってきました。RCCで練習して、全米各地の試合に出かけ、戻ってきて、また練習する。試合で悔しい思いをいっぱいして、RCCでその解決策を試す。その繰り返し。
ここで研鑽を積めば、他のコースで苦しい場面に陥った際にも切り抜けられる。深いバンカー、計算が難しい傾斜、日本では珍しいポアナ芝……RCCでとことん試せたことが、イマジネーションを与えてくれました。地道に重ねた修練が、PGA3勝の糧になりました。

渡邊: RCCでもぜひ1勝をあげてほしい。みんなが今も期待していますよ。

丸山: RCCというコースは、試合となると豹変するんですよ。僕はふだんのRCCに馴染みすぎて、この豹変に戸惑ってしまうのです。試合のときのRCCは、まるで異なる顔を見せてくる。なんとしてもRCCで勝ちたいのに、ここで本戦を戦える機会は年に一度だけ。
こんなに練習させてもらっているのに、こんなに苦労させられるコースはないと思いますね。(笑)

渡邊: タイガー・ウッズもRCCでは勝てませんが、事情は同じ?

丸山: きっと、そうでしょう。一筋縄ではいかない。そこがRCCの魅力ですから。

「パワーとスピード」
だけでは大味だ

渡邊: 最近の丸山さんは、ゴルフ界の指導的立場にあって、メディアでのコメンテーター、解説者としてもご活躍です。3年前のジェネシスオープンからラウンドリポーターをお務めでした。プレイヤーとは異なる立ち位置でゴルフを捉える機会も増えた今日、今のゴルフ界はどう映っていますか?

丸山: 僕がPGAでの初勝利をめざして技術を磨いていたころとは、かなり変容したと感じています。今のゴルフは、スピードとパワー。大きなドライバーを思いっ切り振り抜いて、18ホールを回る間、常に同じことができる人が強い。大味なゴルフですよね。
復活を遂げたタイガーも、パワーのゴルフをしています。ただ、彼の場合はパワーだけでなく、繊細な技も持ち合わせているから、ここぞというとき、一瞬でスパイスを利かせてくる。彼の多彩なテクニックを、僕は〝七色の調味料〟と呼んでいます。

渡邊: パワー+調味料なら、タイガーには、今後も期待できますね?

丸山: パワー一辺倒の若手たちは、もうちょっとイマジネーションを持つべきじゃないかと思います。

渡邊: パワーとテクニック、そしてメンタルも大事?

丸山: ゴルフとは、そういうスポーツですから。勝負の決めどころでは、子どものような無邪気さも大事。

渡邊: 東京オリンピックをどう見ていますか?

丸山: 会場になる霞ヶ関CCを下見した限りでは、やはりパワーゲームになると思います。勝負を左右するのは、ティーショットでのアドバンテージ。ドライバー巧者たちがせめぎ合う中、その日、パットの調子がいい者が勝つ展開でしょう。その意味で、松山英樹選手には期待大。何と言っても自国開催の地の利もありますから。とはいえ、世界のスーパースターが集結する大会だけに、決して楽観はできません。

渡邊: タイガーに「東京で待っているよ」と伝えたら、「ぜひ」と答えてくれました。調子を落としていたころは「タイの代表枠をめざそうか?」と冗談めかしていたものですが。

丸山: タイ? ああ、お母さんのお国ですね。でも、今の彼なら、アメリカ代表も充分狙えるでしょう。

全米オープン

2005年「全米オープン」

次代のスターは
資金なしでは育たない

渡邊: 私たちは、2006年から「リビエラ未来創りプロジェクト」として様々な社会貢献をしておりますが、よりその役割を果たしたいと力を入れています。

丸山: 僕も、未来の人材を育てる活動には関心を持っています。日本ゴルフ協会とも相談しながら、いろいろ模索しています。
プロゴルファーをめざすには、お金がかかるというイメージがあるでしょう? それを覆したい。

渡邊: 国際レベルの競技に出るようなジュニア選手だと、渡航費用だけでも親御さんの負担は相当なもの。

丸山: 現在活躍中のトップ選手の多くが、10代半ばからアマ競技で頭角を表し、プロになっています。といって、いわゆる富裕層の子女はほぼいません。親御さんたちは大変な思いをしながら、才能あるわが子をサポートしているのが実情です。

渡邊: 公的支援もないわけではないものの、周辺各国に比べても、日本は遅れているといわざるをえません。

丸山: 企業や団体、篤志家によるファンドの力が求められています。

渡邊: ゴルフに限らず、スポーツはみんなが共有できる〝夢〟。その振興に、リビエラも微力を尽くします。

第4回丸山茂樹ジュニアファンデーションゴルフ大会

2013年「第4回丸山茂樹ジュニアファンデーションゴルフ大会」レッスン会の様子

「練習」と「夢」は
続けることが大事

渡邊: 丸山さんのPGA3勝にも寄与した〝盟友〟、ツアープロコーチ・内藤雄士さんの理論によるゴルフアカデミーがリビエラスポーツクラブでは大好評。丸山さんからも1つアドバイスをいただけませんか?

丸山: メソッドは、〝やり続けること〟が大事ですね。僕は、初心者の方にもトップクラスのプロにも、ハーフスイングの練習を続けることをおすすめしています。
両腕をパッと開いた真横の平行線のところ―時計でいえば、9時から3時までの位置を意識して、パチーンと打ちます。

渡邊: シニアは、そこまで肩が回らないないような……。

丸山: 加齢によって可動域が狭くなっているからこそ、このトレーニングが効きます。体が自然と覚えるまで、最低週2回は練習を続けてください。リビエラスポーツクラブでは、この様なコンディショニングのプログラムもあるそうで。とても素晴らしいですね。

渡邊: 最後に、〝座右の銘〟は?

丸山: そんなのは特にないけれど、好きな言葉は「夢」ですね。うまくなりたい、プロになりたい。その夢だけはずっと持ち続けてきたし、50歳になった今も変わらない。
渡邊会長だって、そうでしょ?

渡邊: 夢はすべての原動力ですね。
ありがとうございました。

丸山 茂樹

リビエラグループ代表・渡邊曻と談笑

丸山 茂樹

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